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第一章・第七話

『チート』


「何よ・・・これ」
 横にいたフィアが、愕然とした表情で言った。
 足元や空、建物に至るまで、虫に食われたように”穴だらけ”になっている。文明都市カルミナ・ガデリカの美しい情景は、今はもう見る影も無い。
 時々走るノイズが、異常なほど目を刺激する。
「フィア・・・これって・・・」
「わかんないわよ」
「みんながマク・アヌに集まってた訳がこれかな」
「何か、急がないとやばそうね」
 静まり返った町。
 静寂という闇に覆われたそれは、ゴーストタウンと呼ぶに相応しいものがあった。

「いらっしゃいませ」
 NPCの陽気な声が聞こえ、次いでザッと、ノイズが走った。
 店内には数名の人がいたが、誰も彼も動こうとはしない。
「誰がワイズマンかしら」
 バラバラに並べられたテーブルを器用に避けながら、フィアは一番奥にいるPCに目を付けた。
「いた」
 指差す先にいるのは、頬杖をつきながら、静かに目を閉じている老人だった。
「ねてるのかな」
「さあ」
 顔を覗き込みながら、フィアは何故かウィスパーを使って答えた。
 物知りで人嫌い・・・という態度、いや、一種オーラみたいなモノが感じられる。
「あの〜」
 フィアが話し掛けると、ワイズマンは静かに顔を上げた。
「・・・」
 およそ優しいとは言えない目つき。
「あの、僕達ターコイズって人から紹介された・・・」
「・・・ああ、そう―か。聞いて―いる」
 ザザッ――
 ノイズが走る。
 今度のノイズはワイズマンの目に纏わり着くように、そこに停滞した。
「あの・・それで、何を知っているんですか?」
「いろ―いろ―だ」
「私たちのことに関係あることで、知ってること早く話してよ!」
 ワイズマンの鈍行列車的な言葉に痺れを切らしたらしく、フィアはテーブルにドンッと手をついた。
「フィア! 止めなよ」
「だって―」
「多分、今回線が不安定なんだ。ワイズマンさんだって、こんな時に話聞いてくれてるんだから」
「う・・・」
 再び振り上げた手を制すと、フィアは渋々手を引っ込めた。
「すまないが、君達の要望には答えられない」
「え?」
「今、私は別の件で手一杯なんだ。君たちの事にまで、頭を使っている余裕は無い」
 テーブルがカタカタと揺れていたので、横を見ると――フィアがフルフルと震えている。・・・一瞬、嫌な予感が頭を駆け抜けた。
「私ももうじき落ちる。その前にやらねばならない事が二,三あるんだ」
「ぐぐぐ・・・さっきから聞いてれば! 何で断るって言い始めた途端、回線元に戻ってんのよぉ!!」
「フィ――!」
 と、止めるのも遅く、ちゃぶ台返しよろしく、フィアはテーブルを引っくり返した。
 ――嫌な予感大当たり。
 ドカンと大きな音がして、テーブルは二つ隣のテーブルとぶつかり、椅子を巻き添えにして倒れた。
「あまり派手にやるとサーバーに負担がかかるぞ」
 ワイズマンは横のテーブルに移動し、また元の体勢に戻った。
「あまり派手にやると・・・サーバーに・・・あっ!」
 僕が閃くのと同時に、フィアは二つ目のテーブルに手をかけていた。
 ドカンッ!
 またも二つ隣のテーブルまで飛んで行き、派手に倒れた―――と、同時に、後ろにいた重斧使いと右側にいた剣士の姿が突然消えた。
「フィア、ここが静まり返っているわけが分かった!」
「ん?」
 椅子を持ち上げていたフィアは、頭に「?」を浮かべてこちらを向いた。
「ここのサーバーは今、何らかの原因で不安定なんだ。だから、みんななるべく負担をかけないようにこうして静かにしてるんだよ!」
「だから?」
「騒ぐと誰かが落ちる」
 やっと気付いたのか、フィアは恐る恐る椅子を下ろした。
「そうゆう事だ」
「だったら、あんたが喋ってくれれば済む事じゃないの!」
 再び椅子を持ち上げるフィア。
「この状況で敢えて助言を求むなら、礼金としてこれだけ用意してもらおう」
 ゆっくりと両手を突き出し、指を開いた。
「10M」
「え・・・」
「世の中Give and takeだ」
「・・・無理」
 と言って、フィアが椅子を投げた途端―――画面は真っ黒になった。

「さっき話してたのは?」
 ワイズマンの後ろにいる武者風の剣士が言った。
「さあ。ターコイズの知り合いらしいが・・・どっかの二人に似てるとは思わないか?」
「さあな。まあ、あんたの事だ。結局面倒見るんだろ?」
「フフフ。私も忙しいので大した事はできないが・・・。まあ、代償は彼等の”労力”に値下げだ」
 相変わらず腕を組んでむっつりとしている重剣士は、肩をすくめ、店を出た。

「落ちたよ・・・」
 ニューロゴーグルFMDを脱ぎ、僕は米神を強く圧した。目の疲れが激しいのか、頭痛がひどい。
 ザ・ワールドを閉じたとほぼ同時に、メールの着信音が鳴った。
「なんだろ」
 『送信者:ワイズマン 気が変わった。交換条件を変えよう。君にはチートプレイヤーについて調べて欲しい。チートプレイヤーについて調べ終わったら、再びメールをくれ。では』
「驚いた・・・」
 何の気が変わったのかは分からないが、とにかく僕にも手をつけられそうなものになった。僕はフィアに同じ内容のメールを送り、結果、二人で調べることとなった。

「ただ今」
「お帰りなさい」
 成人はどっかりとソファに腰を下ろした。背伸びをしても、全く肩の疲れは取れない。
 裕子は背中から抱きつき、その疲れきって硬くなった肩に手を置いた。
「明日も遅いの?」
「ああ。この所何かと余計な事ばかり起きてね・・・」
「祐斗は?」
「もう一時よ。とっくに寝たわ」
「そうか・・・母さん。 國井が動いてるようなんだ」
「國井さんが」
「ああ。少し厄介なことになるな」
 裕子は不安をもみ消すように、肩に置いた手に力を入れた。

 ザッ・ザッ・ザーーー

 砂の嵐が目から離れず、僕はベッドから起き上がった。
 枕の上に敷いたアイスパッドはもうだいぶぬるくなっている。
「まだ三時か・・・」
 音もなく一秒二秒とスライドしてゆく秒針。その下には大きくデジタルの表示がしてあり、どちらも時が同じように進んでいる。
 ワイズマンに言われた通り、あの後色々なサイトを回ってチート行為とチートプレイヤーについて調べた。
 検索してみると、何千と言う検索結果が出てきた。今日はその中で、用語集を取り扱っているサイトをfavoriteに登録し、サッと目を通した。DoS AttackやWebバグ等、全く理解できない用語が多数出てきて、頭痛が余計ひどくなった。
 スピーナは言った。「私にも解りません。ただ、ターコイズ様はこう言ってました。”セリアはまだこの世界にいる”と・・・」
 この世界にいる?まるで分からない。異世界に迷い込むなんて・・・。まるで不思議の国のアリスじゃないか。
 アナログをこの世界とすると、 丁度ザ・ワールドの様に、デジタルな世界もまた同じように時が進んでいるのだろうか。
 もし朋美達がザ・ワールドの世界にいるのなら、この一分一秒にも何かが起こっているのかも知れない。言い知れない焦りが体の中でざわめくのを感じる。
「・・・・・・」
 喉が渇いたので、僕は背伸びをし、部屋を出た。

「ふぅ」
 大き目のコップに水を波々と注ぎ、一気に飲み干す。
 ギシギシと小さな音を立て二階に上ると、奥の書斎から僅かな光が漏れていた。
 スタンド電気の明かりだ。
「父さん、帰ってきてるの?」
 何となく、聞こえるはずも無いぐらいの声で言って、書斎を覗いた。
「―――!?」
 そこでは、父さんが僕と同タイプのインターフェイスを着け、いつもとは違う、ゆっくりとした口調で喋っていた。
「そうか。では、スピーナ、彼にこう伝えてくれ・・・と・・・」
  ――その口調には憶えがある。
 気付かれないようにそっと、部屋に戻る。
「何で父さんが―――」
 ドアを背に、しばらく僕は息を殺していた。

 授業終了を知らせる鐘が鳴り、ほうきを手に廊下へ出た。今年最後の大掃除だ。明日から、この学校は冬休みに入る。
「東君、私ちりとり取って来るね」
 大体の所を掃き終わり、集めたゴミを宮田さんの持つちりとりの中に入れる。
 次いでバケツに水を入れ、雑巾を絞る。
「くぅ〜〜。冷たい」
 冬も本場のこの季節、雑巾絞りは正に拷問だ。
「あ、私自分のはやるよ」
 この日の為に用意したらしい真っ白な雑巾を、宮田さんの手から素早く奪い取り、水に漬けた。
「あ」
「いいよ。もう手麻痺しちゃったし」
 ちゃぽちゃぽと数回水に漬け、ぎゅっと絞る。宮田さんは、その一部始終を、バケツの前に座り、じっと感心したように眺めていた。
「はい」
「え?」
「ぞうきん。窓拭きの人達終わったみたいだから、早く終わらせないとな」
「うん! ありがとう」
「どしたの?」
「・・・ううん。さ、終わらせよう!」
 二人で両側から攻めて行き、勢い余って中央でゴチンとやってしまった。あまりのお決まりな行為に、自分でも解かるぐらい顔が熱くなった。・・・、こうゆうのを青春の一ページと言うんだろうか?
「咲〜! 終わったぁ?」
「柳ちゃん」
 笑いながら頭を押さえる二人を見て、柳は走って来るなり、
「あ・・・お邪魔だっかしら!」
 なんて、大きな声で言った。その声にクラスの奴等・・・いや、隣のクラスの奴等まで窓から身を乗り出している。その視線の中には、何かチクチクと痛いものすら感じられる。
「ご、ごめん〜!」
 と振り向いた瞬間、柳はバケツに足を引っ掛け、豪快に水をぶちまけた。

「ホラ。しっかり拭きなよ」
「はい・・・」
 妙にしおらしくなった柳を加え、今年最後の大掃除は終わった。

 居残り掃除を終わらせ、僕と柳と宮田さんの三人で、一緒に校門を出た。
「良いお年を」
「うん。柳も良いお年を」
「柳ちゃん、良いお年を」
 校門を出て、一番最初の交差点で柳と別れ、残ったのは僕達二人になった。
「そ、それでね、東君」
 二人になった途端、宮田さんは少し聞き取りにくい声で、しかし色々と喋ってくれた。
 きっと、喋らなきゃ悪いと思ったんだろう。そんなことはないのに。
「私ザ・ワールドしてるって言ったよね」
「あ、う、うん」
 宮田さんの話を聞きながら、僕は呆然とチートのことについて考えていた。明日からは冬休みに入る。一度図書館に行ってみるべきだろう。
「あ・・・あの・・・もし、もし私が――になったら、――れる?」
「え?」
 ぼーっとしながら歩いていたせいか、それともたまたま通ったダンプの音のせいか、宮田さんが言った事がよく聞こえなかった。聞き返すのも悪い気がして、
「もちろんだよ」
 と多少力を込めて返事をした。
「ありがと・・・また一月に会おうね」
 宮田さんは満足そうな顔をして頬を掻くと、青になった信号に向かって走り出した。
 しばらくぼうとしていたが、中途半端に上げた右手が何だか恥ずかしくなり、慌てて引っ込めた。

 館内は水を打ったような静けさで、コツコツと靴が床を鳴らす音だけが響いている。無機質なデザインが、この静けさと良く調和している。
 家から自転車でおよそ十分の場所にあるこの図書館は、美術館と一緒になっている為、下は地下二階、上は六階という、図書館としては都内最大の規模を誇っている。
 天井の高さが三階分程もありそうなホールを抜け、階段付近に並べられた館内用パソコンに向かった。
 パソコンの右のスロットにカードを通す。
『name:東祐斗 住民番号:6567621』
 間もなくパソコンは立ち上がり、前回借りた本の名前などが画面上に並べられた。
「チート、チート」
 『チート』で検索をかけたところ、ざっと二百近くのHitがあった。
「よし」
 パソコンを閉じると、すぐさまエレベーターに向かい、三階のボタンを押した。

「あった」
 三階は無機質な印象の一階と違い、温かくゆったりしている。床の絨毯も椅子もふかふかだ。適当に二,三冊手にし、椅子に腰かけた。
「さーて」
 ―――読み始めて十数分。
 チートについて理解するには少ない時間だが、興味が削がれるには充分な時間だった。ページをめくる手もしばらく止まったままだ。居心地の良さも相まって、頭が上下に揺れる。相手はCC社のプロ達を相手に犯罪行為をしている連中だ。僕が生半可な知識を手に入れたとしても、何の頼りにもならないだろう。そんな事は分かり切っている事だ。しかし、邦彦も邦彦で頑張っているようだし、スピーナも同様に色々と考えてくれているらしい。何より、ターコイズと知り合うきっかけにもなったあのBBSでも、自分にも何かできないかと協力をしてくれる人が数多くいる。
 などと禅問答をしてはみたものの、眠気だけが頭に入ってくるのは変わらなかった。元々寝るのが好きな性質だ。ふかふかの椅子と程よい暖気に、僕の目はいつしか閉じていった。

「フムフム・・・あー、だめだこりゃ。全然わかんない」
 横からそんな声が聞こえ、僕はうっすらと目を開けた。目を開けようとしたが、中途半端な眠りだったのか瞼が動こうとしない。
「あー、やめやめ。つーか、ホントに起きないわね、コイツ」
 ぷすりと、頬に爪を突き立てられ、僕は水でもかけられた様に飛び起きた――いや、実際それぐらいびっくりした。
「痛い!」
「あ、起きた」
「痛いなぁ・・・あー、血が出てる! 全くもう、誰だよ君」
 相手の顔に覚えは無い。刺した頬から血が出ているのに、気にしている様子は全くと言っていい程―――
「あー! 爪折れちゃったじゃないの!! 何よもう! 人が善意で起こしてあげたってのに! 恩を仇で返したな!」
 ――いや、全く無い。と言うか、理不尽すぎる。
 ケラケラと笑う悪魔――もとい女の子を見る。短めのスカートから伸びる無駄の無い足、短めの髪、パッと見の印象はいかにも強気、活発と言った感じだが、最馬の制服を着ている。
 その時ふと、漠然とした考えが浮かび、まだうっすらと血の出ている頬を押さえながら、
「・・・君もしかしてザ・ワールドやってる?」
 と聞いた。
 その女の子はきょとんとした顔で「当然でしょ」と答えた。

 図書館の一階の談話室で、自動販売機で買った紅茶をすする。缶だからしょうがないが、異常に甘い。
 横にいるのは最馬の制服で偽装したお転婆娘――もとい、美袋沙耶。
「まさかー、て言うか、絶対ユキトだと思った!」
「何で?」
「そんだけ本人と似てるエディットにしてれば、誰だって分かるわよ」
 美袋は僕の顔をまじまじと見つめ、クスクスと笑った。
「人の顔見て笑うなんて失礼だよ」
「ごめんごめん。ところでさ、ユキト・・・じゃなくて祐斗は何かわかった?」
 確かに顔見知りではあるが、もう既に呼び捨てにしている。
 流石だ。
 と、何故か心の中で納得。
「いや・・・ワイズマンさんはああ言ってたけど、まさか僕らがチートキャラクターになるわけにはいかないし・・・」
「って言うか、結局あの人何が言いたかったのかしらね?」
「え?」
「だって、チートとかそういうのって、あのじいさんの方が詳しそうじゃない? それをわざわざ調べろなんて」
「確かに・・・おかしいね」
「でしょ? 何か意図があるみたい」
「・・・。もう少し調べてみようか」
「うん」

「チートって言ってたけど、具体的にそいつ等に逢ったらどうすればいいかとか載ってないかな」
「『チートプレイヤーへの対策』・・・あ、ヒットした」
「フフフ」
 美袋は得意げな顔で僕の肩を叩き、サイトを開いた。
「何々・・・OSの新規格ALTIMITが始動した現在、ネットワークゲームにおいて相手プレイヤーのパソコンに直接危害が及ぶウィルス等の感染の危険は減ったが、チートはその世界の限界―法則を越えない程度ならばある程度の知識があれば可能である。尚、これに対する対策は、そのPCデータに直接干渉して無効にするか、サービス側の対処が必要・・・か」
「つまり、今の私たちには何もできないって事じゃない」
「みたいだね。僕がザ・ワールド続けてる理由話したよね。同じような事件がここ最近続いているらしくて、それについて調べているグループがあるんだ」
「ふうん」
「ワイズマンさんを紹介してくれたのは、そこのリーダーのターコイズってPCなんだ」
「あ、私知ってる。何でも、全ての魔法取得してるって言うすごい魔法使いよ。あのザ・ワン・シンイベントも後ちょっとのところまで行ったらしいし」
「ふ〜ん。・・・彼等にこの事を話したら、何か対策を立ててくれるかも知れない!」
「ん〜、そんなんで何とかなるなら、もうとっくにやってると思うけどな」
「そうかも知れない・・・だけど、とりあえずこの事をワイズマンさんとターコイズに話してみるよ」
「そう・・・じゃあ、今日は帰る?」
「うん。今日は朋美のとこにも寄ろうと思ってるし」
「朋美?」

 図書館を出ると、もうすっかり暗くなっていた。図書館の目の前の広い広場を抜け、駐輪場に向かう。
「ん? どしたの?」
 駐輪場を出てすぐの所で、美袋は突然立ち止まった。
「あのさ・・・二人でいたいところ悪いとは思うんだけど・・・私も行っていい?」
「え?」
「私も、その人見てみたいんだ。いいでしょ?」
「うん。全然いいよ」

 東病棟の405号室。今月移った病室は個室だった。聞いた話では、朋美の意識不明の原因は未だ不明。クラスメイトが置いて行った花が、花壇の様に、窓際を飾っている。
「どうしたの?」
「ううん。きれいな人ね。祐斗が夢中になるわけだわ」
「え゛?」
「あら? 朋美って祐斗の彼女なんでしょ?」
「邦彦の奴が聞いたらまた嫉妬するだろうな・・・。いや、朋美は僕の幼馴染。朋美にはちゃんと彼氏いるよ。前に話さなかったっけ?」
「あー、そうだっけ?」
 などと言って、何故か引きつった顔をして目を逸らした。
「ちなみに、朋美はセリア。朋美の彼氏の邦彦はミネルトってPC使ってる」
「へぇ。あんたの周りは有名キャラばっかりね」
「そなの?」
「うん。ミネルトもよく聞く名前よ」
「碧眼のセリア、ミネルト」
「そう、それ。・・・で、勇者ユキトはこれからどうするの?」
「勇者って・・・」
「眠り姫を助ける、勇者ユキト・・・と、美しき仲間。そして後のザ・ワールド界の伝説に!」
「まあ、そんなこと言って誰かさんが怒らなければいいけど」
 何故かある友人の姿が浮かんだ。
「何それ? あー、もうすっかり暗くなったし帰ろうかな」
「そうだね」
「じゃあ、朋美、また来る」
「朋美さん、できたらザ・ワールドでも逢いましょうね!」
 その日の帰り道で知ったのだが、美袋と僕の家は意外と近かった。

To be continued

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